夢の中に……

突然だけど、昨夜見た夢の話を。
うちの裏のマンションの1階に誰か引っ越してきた。かなりの大荷物。家族なのかな、などと思っていたら、なんだか見たことのある人がうろうろしている。あれっと思って降りていき、近づいていってみると……なんと、その人はキンちゃん(萩本欽一)だった。
「あれぇ? キンちゃん?」と声をかけると、ばれちゃったかというような照れ笑いを浮かべたあと、「シーッ」と口の前で人差し指を立ててからオイラを手招きした。
「あんまり大きな声を出さないでね」
「でも、ここに引っ越してきたんですか?」
「そう。でもワタシはいつもいるわけじゃなんだけど、子どものためにね」とのこと。
どうも、キンちゃんには就学前の子どもがいるらしい。奥さんの子なのかどうかは聞かなかったが。
なんでもこの近くにとても有名な幼稚園だか保育園だかがあって、そこに入れたいというお母さんの要望を聞いて、急きょ、ここの部屋を借りることにしたんだとか。
で、そのしばらく後で、オクチャンと散歩しているときに、びっくりさせようと思ってその話をしてみた。
「今日さ、裏のマンションの1階に引っ越しがあったんだけど、誰が来たと思う?」
「誰が、って知ってる人なの?」
「そう、ぜったい知ってるよ」
「誰なのよ」
「なんとね、キンちゃん」
「キンちゃんて、どのキンちゃんよ」
「キンちゃんていったらキンちゃんだよ。ほら、『ヤヤウケ!』のキンちゃん」
「ああ、萩本欽一ね」
「そうだよ」
「……へえ」
なんか、全然びっくりしてくれなかった。そのときに「どうして?」とか「なんでわかったの?」とか聞いてくれたら、さっきのことを話して、その幼稚園だか保育園だかってどこなのかなとか、うちのガキンチョも検討してみようか、なんていうふうに話が広がったのに。がっかりだった。そしてちょっとむかついた。
……その時、実際のオクチャンがオイラに声をかけてきた。
「おはよう」
いつもなら、すぐに「おはよう」と返すんだけど、夢の中でのことがあったので、一瞬ためらってしまうオイラがいたのだった。まったく、ガキかオイラは。