浜田真理子ライブ&久世光彦展

3年前に急逝した久世光彦のエッセイに想を得た浜田真理子のライブ、「マイ・ラスト・ソング〜あなたは最後に何を聞きたいか」に行った。
今回は2回目で、昨年秋にも同じ世田谷パブリックシアターで行われたんだけど、そのときは小泉今日子も朗読という形で出演していたが、今回は浜田真理子の歌とピアノのみ。
それと、ちょうど今、世田谷文学館では久世光彦展が開かれていて、ライブのチケットを持っていくと無料で見られるということもあったので、夕方からのライブの前にちょいと見に行ってみることに。
出足が予定より遅くなってしまい、文学館には1時間くらいしかいられなかった。時間をかけて見たかったと後悔。特に久世の自筆のメモや仕事場を再現したところなど、じっくり見れば何か別の思いも出てきたじゃないかな。
そんななかでも、高校時代の夏のことを語った言葉や、向田邦子の母に送った手紙など、心に残るものがいくつか。とりわけ、久世の母が亡くなる前に語った、自分の葬儀への思いは、カーチャンとトーチャンのことが頭をよぎり、ぐさっとくる。カタログ?「久世光彦の仕事」(1000円)を購入。
芦花公園から下高井戸経由で世田谷線に乗り三軒茶屋へ。2両編成ワンマン運転世田谷線は、路面電車の面影を残しており、なかなかの風情。
パブリックシアターの客席は、昨年よりもさらに年齢層が上の感じ。キョンキョンがいないからかな。ピアノの弾き語りで歌を歌い、合間にぽつぽつとMCを交える構成は、いつもの浜田真理子のライブとおんなじ。去年のように、久世の写真が飾られるでもなく、誰かゲストが出演するでもなく。そのぶん、歌をじっくり聞くことはできたけど。
特に第1部は、聞けばわかるけどタイトルは出てこないといった感じの曲が多かった。休憩中に、今日買ったばかりの文庫版『マイ・ラスト・ソング』の巻末にある曲名一覧を見て歌えるかどうかをオクチャンに尋ねられ、すぐに歌える曲があまりなかったら、「なんだ、あんまり知らないんじゃん」と言われてしまう。
でも自らが「ナイトクラブ風、得意の(笑)」と言った第2部は、ほとんど知ってたぜ。だからなのか、こっちのほうがぐぐっと染み入ってきた。あえてベスト3を挙げるとすれば、「フンフンフン」の歌詞に彼女ならではの解釈が入った感じの「プカプカ」、ほんとはマチャアキの歌でいちばん好きな「涙から明日へ」、そして久世の「マイ・ラスト・ソング」には入っていないけどあえて今年も最後に歌った、アンコールの「哀しみのソレアード」かな。欲を言えば、久世が三拍子の歌が好きだったからと歌った「VAYA CON DIOS」もよかったけど、それがちあきなおみの「円舞曲(ワルツ)」だった最高だったかも。ぜったい泣いちゃっただろうけどね。
去年も思ったんだけれど、この会場、音響がとてもよくて、彼女の歌声とよくマッチしている気がした。いま「歌声」と書いたけど、実は彼女の大きな魅力は歌声というより、歌詞の部分を歌い終わってブレスに入るまでのほんの一瞬の“間”というか余韻にあるのではないかと、今回あらためて思い至った。その余韻に、何とも言えない情感や色気のようなものが乗っている感じなんだ。だから、彼女のライブでは、誰もが知らず知らずのうちに息を潜めるようにしてしまうんじゃないかな。