今年初めての芝居「ろくでなし啄木」

今年の観劇はじめは、三谷幸喜生作・演出の「ろくでなし啄木」(出演:藤原竜也中村勘太郎吹石一恵)。今年は三谷幸喜が50歳になるということで、生誕50年の感謝をこめて芝居4本に映画に小説と、書きまくり演出しまくるらしい。その第一弾がこれ。
かなりの値段(大枚1万円)だし、ウチボウズがいるためオクチャンと二人ではいけないからどうしようか迷ったんだけど、吹石一恵が舞台でどんなふうに立つのか気になったし、思いのほかいい席が取れそうだったこともあり、思い切って見に行くことに。
平日のマチネだったからか、客席は主婦層が多い感じ。オイラの隣も後ろも主婦友達で来ているようだった。そして、その主婦たちが笑う、笑う。オイラの中ではそれほど笑いいっぱいの芝居という感じでもなかったのに加え、彼女たちの笑い声に圧倒されちゃって、こっちはあんまり笑えなかったよ。
でも、笑えないからつまらなかったというわけではない。サスペンス仕立ての構成は、「羅生門(藪の中)」を彷彿させてわくわくさせたし、役者たちは皆頑張っていた。特に勘太郎は、オヤジ譲り?のサービス精神全開で、芝居を立体的にしてくれた。それにしても声もだんだんオヤジさんに似てきたよね。特に女性の声色を使うところなんて、怖いくらいそっくりだった。吹石一恵も、決してうまいとは言えないけど、素直にまっすぐに演じている感じで好印象。またそれが芝居の役にも合っているので、効果的だった(このあたりは三谷幸喜の狙いなのかもね)。藤原竜也もすねもので底が見えない啄木を熱演。役としてなのか本人がなのかわからないけど、時々迷ったような演技をするところもあり、それも啄木の屈折した心情にマッチしていたように思う。
ただ、サスペンス仕立てで引っ張ったまではよかったけれど、その謎解きがあれなの?という疑問は残った。裏には、啄木やほかの人たちの言うに言えない心情が隠されていて…というのを期待していたからか、ちょっと期待外れ。なんか未来への希望的なラストシーンも、少し取ってつけたような印象が。もうひと工夫というか、もうひと詰めあれば、もっと違ったものになったのかも、という気がしてならなかった。
たくさん書くのもいいけれど、一作一作をぎりぎりまで詰めて作ってほしいなと思った次第。